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「彼らの不死性に惹かれ建築・薬学・宗教や道術と共に居着いた渡来人」がおり
やがて彼らの間に諍いが生じたのでは、と予想しました。
今回は彼らそれぞれが持つ「不死」の考察を中心に、宮で起こったイベントの詳細を推定したいと思います。
回生の不死
不死といえばまずは隻狼も持つ回生の力、桜の力である。
これは宮の神域にいた者、「水生の者」と呼ばれた白木の神職の力であると予想される。
キーとなるのは「白桜の樹液」、変若水である。
白い刃で削り出した己の形代を源の水に流し、竜に奉る儀式だ
瘤取りが済めば、水に流すが習わしだ
これまで変若水は飲むと植物化する水であると考察してきたが、形代流しが絡むことで新たな可能性が提示された。
形代は心残りの幻である
それは形代流し=瘤取り=水への奉魂、と読めるこれらのテキストから、
「生物から(余分な/終わった)魂の一部を削り出し、溶かすことができる水」でもあるという予測である。
桜の性質はデフォルトで溶けており、桜(竜)の魂が混ざっているのである。つまり飲んだものは、それに溶けた魂の影響を身体に受けており、植物化もその一環という整理となる。
溶けてきた、溶けてきたぞ…
そして変若水の池(または壺でも水溜りでも)に溶けた魂は、ある条件をもって変若水から武装や服装ごと復活するのではないか。
隻狼が回生するとき、一心が蘇ったとき、その傍らにあったものは何か。
それは隻狼や弦一郎の骸である。
彼らの骸は(何らかの仕込みにより)変若水を詰めた袋、池の代わりとなる力を持つと仮定すると、溶けていた魂が変若水の水面から蘇る、という法則性が微かに見えてくる。
(服や鎧もセットである点、水面に映す「姿」も関わっているのかもしれない)
形代の御霊、不死斬りの剣、そして源の水鏡が揃ったとき、水生は成る。
対象者の死、即ち魂の100%が溶けたとき、が予想される条件である。
さらに一心を見れば解る通り、それは記憶をそのままに若返りをも可能とする不死の技である。
「変若」の名に相応しいといえるだろう。
かつて神域にあった水生の巫女は、この神桜の力を用いて不老と不死を得ていたのではないだろうか。
変若水飲用者独特の、姿が異形に変わる副作用については、彼女は原因となる魂の余剰を白刀で削り落とすことで回避出来たのだろう。
この瘤は病の予兆であり、病が重くなるほどに、育つという
ただしおそらく一つの池には一人が定員と予想される。他人が含まれると魂が混ざってしまうことが予想されるため、納得のいく仕様ではある。
なお次々自動的に混ざる魂は葦名に拡がる異形の呪いにもなっているが、具体的な削減部位、および「記憶/業」と「脂/炎」の浄化については次回以降にまとめたい。
吸精の不死
続いて渡来人の郷、「京」の技である。
笛を用いたおそらくは道術の延長と思われるが、そもそもこれは自分が若くなる代わりに誰かが老いるものであり不完全である。
しかし前述の「若返りの回生」が可能な者を対象とさせてもらえるならば、永久機関が完成する。
渡来人たちはおそらく、死なずの回生の巫女を悟りの求道者、仏教徒と成して文字を教え、手元に引き込むことに成功した。
以下の一文を残した、死なずの仏教徒の誕生である。
死なずとは、永き悟りの旅路なり
死なぬ訳もまた、悟らねばなるまい
だが彼らにも一抹の不安があった。事件や事故、吸引対象である彼女の突然の外傷による急死である。
回生すべき魂が水に溶けず、涅槃に消えてしまうリスク。それを避けるため、彼らは利己的な行動に出た。
我、蟲を賜わり、幾星霜
外傷に対する不死身要素、即ち蟲を巫女に憑けたのである。
蟲憑きの不死
道教には古来、蟲毒など卑虫類を操る呪技(巫蠱の術)があると伝わる。
死なず半兵衛を見れば判る通り、蟲憑きは外傷に対しては完全な再現復活機能を持つ。
しかし、寺の僧が示す通り老化や飢えには無力でありこちらも完全な不死とは言い難い。
巫女の意向は無視して言いくるめ、渡来人らは彼らの研究で得たそれを回生の巫女に用いた。
永久機関は完成し、調子に乗った渡来人たちは宮の環境を作り変え始め、白黒神木の力が毒に弱まったことは前回考察の通りである。
神なる竜は、西の故郷より来られたという
立場逆転の契機となった落雷の力をも、渡来人たちは自分たちの眷属だと主張した。
我に、蟲を授けられたは、なにゆえか
しかし巫女は、己が都合良く利用されていたことに気が付いてしまったのである。
神なる竜の不死
その後の変若水の変質は、来訪した雷竜の魂まで変若水に溶けたことによるのかもしれない。
(復活した一心にもおそらく混ざっている)
代償として白の一族はやがて首長黒目の異形となった。余分な魂を削り出す儀式は、白の短刀と共に失われたためだろうか。
だが白の短刀は回生の巫女が健在の時点では利用可能であるためか、彼らは暫くは異形とならなかった模様である。
京と神域が水面下で対立したのち、以下のような駆け引きが行われた形跡が見られる。
水生の御初代は、輿入れが決まった者にのみ、密かにこの秘術を授けた
源の宮に輿入れした者たちは、
まずはこれを頂戴する
京の側では神域の集落から輿入れに迎えた花嫁に対し、変若水の力をリセットする水を用意してその力を削ごうとしたのだろう。
対して神域側では予め水中呼吸術を与え、飲んだふりを出来るよう整えていたのである。
無論、その後の一斉蜂起に備えてであるだろう。
これ無くば、神なる竜とは見えられぬ
そうすれば神鳴る竜と見(まみ)えられる、即ち雷の異能を得ると読める記載が論拠である。
(ここでいう輿入れは通常の婚姻契約を指す)
ちなみにリセットはおそらくもうひとつの御霊溶媒樹液である「黒松脂」を用いたと思われる。
そして輿入れした「花嫁」たちの中には、蟲憑依によりいくらでも身から形代を削り出せるようになった回生の巫女の、裏ワザ的な回生クローンもいたのかもしれない。
つまり水場で己を回生した上で、使用済の死体側も無傷で生き返るのである。
それ故にオリジナルである彼女は「水生の御初代」という特殊な別名を得た、という推定もできる。
武と舞に長けた女性ばかりの不自然な一党が生まれた理由とも繋がるだろう。
更に余談となるが、神職の他の生き残りはおそらく内裏にて、回生クローンたちの若さを定期的に吸う「寿命の共食い」で不死を保っているのである。
九郎が嫌う、歪んだ生の最たるものといえるだろう。長寿の長い期間を変若水に晒され続けたためか、雷竜に外見が相当近づいているように思われる。
ぬしの不死
平田屋敷の壺の貴人は、ぬしになりたい
壷の貴人たちは鯉になることを望んでいる。
勿論それは一代限りの鯉で終わる訳ではなく、
成長仕切ったぬしの色鯉として地上に落ち、水に溶け、白蛇に飲まれ、
老いぼれるだけのお前たちに
及びもつかぬ永遠…
蛇柿となり変若の御子に取り込まれることで竜胤の一部になることを望んでいるのではないだろうか。
竜胤は人の魂のサイクルに似て非なる、不老と不死を兼ね備えた回生である。
もしかすると「鯉」とは「いまだ滝下にある竜」を指した比喩であったのかもしれない。
己のため、ぬしの鯉様を弑せんとした大逆の罪人よ…
余談となるがこの「罪人」はおそらく浮舟(鮒)渡りした巴のことと予想される。
そしてかつて巴が仲間であったと考えているならば、彼ら(彼女ら?)は回生クローン、オカミの一員と予想される。
ぬしの世話係の不死は謎であるが、その見た目から巨大鯉の魂と混ざった回生を強行させられたものなどかもしれない。
そのとき、鯉に魅入られてしまいました
「魅」には「姿の見えない、自然界の霊的なもの」という意味もある。
過去に鯉を殺したか目玉を飲むかして、形代が混ざってしまったのだろう。
黄泉帰りの不死
密かな水中呼吸術の仕込みによる浸潤政略の後、京の住人たちは白の一族の突然の奇襲、御初代の怒りに触れ宮から逃げた。
その際、おそらく一部は自ら蟲憑きとなり滝から飛び降りる道を選んだ。
お宿りは吉兆ぞ
かぐわしく、輿入れ奉ろう
これは「御将軍の乗り物(輿)を敵地に乗り入れる」勇ましい戦闘号令だったのかも知れない。古来、吉兆は戦の前に測られる。
お宿り、とは前回考察の「神木の宿り木」であり、
水生村に落書きを残したのは、母の勇ましい逸話を好んだ幼い巴だったのかもしれない。
この地に古くより伝わる秘薬
落ち谷の衆が煎じた毒消しの粉薬
強力な火薬の元となる黄色い煙硝
落ち谷で取れる貴重なもの
宮から逃げた先で「葦名衆」を名乗った彼らの建築技術や仏教、薬学毒学、鉄と火、拳法、および仙女信仰は
落ち延びた菩薩谷、落ち谷を経由し仙峯寺に辿り着くまで多くの痕跡を遺した。
そして同時に逃げた黒松の一族が持ち出した黒の不死斬りと蟲は、猟師となった犬彦を経由しその飼い猿、小太郎こと獅子猿に引き継がれたものと予想される。
(意外にも獅子猿の考察時に触れた内容に今更繋がった)
そう考えると獅子猿の首傷は、松脂状のものが溢れているようでもある。
犬彦はおそらく黒の不死斬りと竜胤を用いて、小太郎の復活に成功している。
そこから黒松の炎は迎え火、即時復活の回生とは異なる「冥土黄泉路からの呼び戻し」の大技を可能とする力があると予想される。
村への道しるべであった
隻狼の回生ではないほうの復活(冥助判定側)も、鬼仏など炎に呼び戻されていることを示唆するような演出があるように思われる。
竜胤の不死
やがて何があったかは明確でないが、雷竜の力が宮から葦名へ移動し「あやかし」となった。
大滝から飛び降りて追えるのは無論、蟲憑きとされた御初代のみである。身を投げねば、の意味にようやく到達したことになるのかもしれない。
着地した彼女は葦名衆と利害一致の奇跡のタッグを組み拝涙に成功、竜の魂を涙として胎内に取り込んだ。
その後、巴として不死の竜胤の御子を産んだ、という推測が過去の考察である。
だが、巴の一族が輿入れで帰郷したのち、なぜか瘤取り/形代流しが出来ず、神域の一族や京の花嫁たちの魂の汚染、不可逆的な異形化が進む。
香を作った以上、白の短刀がなかったためではないだろう。ならば変若水の方に、何らかの変異か不足が起こったのかもしれない。
あるいは竜の御霊は簡単に切り出せないほど強いものであるのか。
竜胤の介錯、如何に巴に頼もうか
そこで巴は竜魂溶液の常飲、涙や御子とは違う形の「竜胤」の呪いにより異形と化しつつある宮の同胞たちを助ける方法を求め、再び地上に降りた可能性もあるのかもしれない。
そうすれば不死断ちもできるだろう
高所落下にも竜胤の御子の巴ならば傷一つ負うことはない。
浮舟を渡るその手にはおそらく、帰還用の白の短刀、および常桜の枝が握られていたのだろう。
そして最後にもう一人、
宮で不死となったと思しき者がいる。
一人の男が、死のうとしていた。
若さを吸う術は、死病には無力だった。
遥かな海を越え、仙術の極みである「不死」に辿り着いたにも関わらず
王となった自分が死ぬのは耐え難かった。
御霊降ろし。人の腹中のもうひとつの魂となり、やがてその身体の主となる呪いの技。
あとは、それに賭けるしかなかった。
男は目覚めた。
飛鳥の如き高み。眼下に源の宮が見える。
自分の脚は、遥か崖下の森林内にある。
異様に巨大な身体は、注連縄を重ねたもの。
魂を封じた下腹部――丹田は、白の神木を用いたもの。
仙郷の王に相応しい偉大な器を。
永遠の崇敬と、京の発展を願う寵愛を。
不死者の国の主、呪いの腹を持つ大樹。
天仙、地仙、尸解仙を兼ねる新たな神仙。
人を捨てた男は、臣下の選択に満足した。
ほどなくして増長した京は、崩壊した。
臣下の何人かは地へ降ろしたが、彼らは谷へ隠れてしまった。
道士たち数人が、人質とされた。
彼の者共は、己に制約の術を課した。
宮への立入りを禁ず――神域の香を持つ者を連れ戻る場合のみ、宮への接近を許す。
それからはただ、役目の時を待つ。
永劫にも思える時間。死ぬに死ねない。
天命を厭い、岩桜を切り倒させた呪いか。
不死を望むなど、愚かなことであったのか。
そのうち何故か、かつての神域の巫女が、
自分の手の届く位置に新たな門を構えた。
見ている。
同情か。憐憫か。あるいは嘲笑か。
死ねず同士の語らいでも望むのか。
そんなことももう、どうでも良かった。
永遠の生命とは、永遠の苦行であった。
神仙の高みは、遥か遠い。
痕跡もないが存在したはずの渡来人たちのリーダーと、
神域の岩に根だけが残る桜の神木の本体のロストから
注連縄ロボの正体を彼らの技術とみられる道教の最終目的=「仙人の不死」と予想した。
腹部にある白い丸太と封じの札、道教の「草人」に姿が酷似している点、およびこれまでの考察からの「腹部の御霊」の考え方を補強としている。
考察が正なら不死の神木は「変若水の塊」としては最上級の物体といえるだろう。
宮の門を永く守るには、死なずが都合良いだろう
鉄砲砦から眺められる巨大な頭部は、門番に堕ちた神仙の姿を模したものなのかもしれない。
隻狼界の徐福は、とりあえず目的だった不死には届くには届いたということになる。
不死の呪い
以上より、水生の御初代こそ八尾比丘尼であり、破戒僧であることが全体の流れから伺われる。
彼女が宮から葦名の地に降り立ったのは、神鳴る竜を追ってのことと想像していた。
香気の石、葦名の底の村に祀られたり
身を投げねば、辿り着けようも無し
だが今、このテキストを読むと2つの疑問点が生まれる。
まず身を投げる前、即ち源の宮にいた時点で「村の石」に目をつけているらしいこと。
加えて源の水場である神域で永い時を過ごしたオカミは、隻狼たちが作ったような源の香は纏うまでもないのでは、ということである。
これで源の香気、揃うたり
即ち彼女の目的は竜でも源の香でもなく、
別の謎の「香気」となる「祀られていた石」そのものだったのではないか、という気配がする。
なぜ石を求めたのか。そもそもお宿り石とされるものは一体何であったのか。
もしかすると、それは宮から失われたもの、
ゆえに黒松は失われ、
その守り人もまた、嫌われ者である
すなわち黒松の樹脂ではなかっただろうか。
次回は白の樹液と黒の樹脂の世界、
魂の溶ける水である変若水と対になる、魂を封じる石についての考察から
異形が産まれる葦名のメカニズム解明を焦点としたいと思います。
参考:
ソメイヨシノ - wikipedia …この桜はほぼすべて「始源を同一とするクローン」であるとのこと。
関連記事:
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