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伝来の京
源の宮には豪奢な邸宅跡、五行思想のほか、旧オカミ門や五重塔など仏教様式の建造物も存在する。
また前回の考察が正ならば、宮で希少金属の採掘と製鉄までも行っていた。
しかし源の宮は地理的に隔離集落である。
高度な製鉄や丹塗りの建造物、何より仏教など自然発生することはあり得ない。
必然として、それらは外部から「伝来」されたのである。それも水没前、即ち「古えのあやかし戦」よりも更に過去という時代に。
掛け軸に描かれた当時の葦名よりも進んでいるのではと思われる、異様に進んだ文化や技術を当時の宮に持ち込んだのは何者か。
隻狼の世界に「中国」があるかは定かではない。だが仏教や丹塗、製鉄、五行思想などは本来、日本には無かった筈のものである。
その持ち込んだ内容からは、それは「大陸から来た者たち」であるとは考えられないだろうか。
では彼ら「渡来人」がやってきて留まった「動機」とは何か。
そこには彼らが持っておらず、探していたものが存在していたからではないだろうか。
それは現在でも宮の特異性ともいえるもの、
即ち「不死」の可能性が高いように思われる。
死なずとは、長き悟りの旅路なり
つまりかつての源の宮の住人とは、不老不死を求めて「日ノ本」「不死の山」にやってきた渡来人の集団がその「半分」であった、と仮定することができるように思われる。
「京」のベースは平安京ではなく、南京や北京がベースの「京」ということになる。
その前提に立つことで垣間見えた、源の宮の歴史を以下に紐解いてゆく。
はじまりの宮
半分であったとしたのは、渡来人が来る前から原住民がいたのではないかと予想できるからである。
彼らが探す不老不死の生き証人たちがそこにいたから、彼らはあの不便な場所へ風水五行を敷き「京」を建てたのだろう。
では彼らが来る前からあったものとは何か。
まずは現在より遥かに小型であったと予想される、中央の泉(火口湖)。
および、水没前なので神鳴る竜はまだ居なかったが、社や鳥居といった神域の神道風宗教は外来のものではない筈である。
そして彼らを惹きつけた「不死の生き証人」たる神主、あるいは巫女がいたと予想される。
そして「岩」と「桜」。あれほど大量の桜は桜竜の影響であったとしても、渡来人が持ち込む理由は特にないので数本の山桜があったのだろう。
最後に、「不死」を求めた渡来人の技術か否か判断が難しい不死に関係するアイテム、
すなわち「不死斬り」は既にそこに存在していた可能性もあると考える。
陰と陽の節切
竜胤の血を受けた不死は、その主を縛る
不死斬りは竜のコアを取り出し、それを飲んだ者の子、不死となった御子の肉体に
主である竜の魂を縛る「拝涙」、
不死斬りには、赤の他に、もう一振りがある
および竜胤の御子すら切り裂く力があり、死者の復活を可能とする「開門」がある。
この二本は竜を倒す意味では対といえるが、その用途では死者の復活に何の意味もない。
生死の境を司る意図において、黒と対になるのは実は赤ではないのではないか。
そう考えると、魂を黄泉から戻す開門に対し、魂を黄泉に送る逆の意味の名を持つ宝剣がある。
刻まれた銘は、「奉魂」
それがこの短刀の真の名
魂を奉じる、即ち「奉魂」である。
形代流しが、本来かつて黒と対であった白の不死斬りなのではないだろうか。
この仮定に拠って考えると、渡来人により「五行」が伝来される前から、生死を表す白黒、すなわち「陰陽」だけはこの地に存在していたことになる。
そして白と黒を象徴するものはもう一対、源の宮にあったと思われる。
変若水の性質でもある「木」、樹木である。
白と黒の一族
白はこれまでの考察で見てきた通り、獅子猿から花から米まで含めた変若水、変若の御子のカラーである。
そして隻狼の時代の宮の有り様から見て、あの大量の水は大量の桜から湧いていると考えるのが自然な見方となるだろう。
自ずと薬水が湧き出すなど奇妙だが、そこには種がある
つまり白の木とは桜であり、その係累といえる一族「変若の御子」たちがいる。
一方の黒は、一族から追うのが話が早い。
ゆえに黒松は失われ、
その守り人もまた、嫌われ者である
水生村の広大な森は山を囲い、源の宮すら包み込んでいる。
黒の松脂、即ち「樹脂の採取」を行っていた犬彦の一族こそ「黒の不死斬り」の管理者であり、かつて源の宮にいた一族であると推定される。
彼らがくすぶっていたのは、本来ならば得られるはずの崇敬も崇拝も受けずに猟師に甘んじていたからなのだ。
だが桜は山ほど源の宮にあるが、黒松など存在しない。
「失われた」のである。それは何故か。
いつしか水生の者は火を忌み始めた
前回考察より「火」とは竜と敵対した五行を支持するもの、すなわち渡来人集団の技術の特徴を指すものと読める。
かつて神域にあった白木の一族、黒木の一族は泉近くに住むことなどから「水生の者」と呼ばれていた(水生村とは別)と考えると、
この一文は黒木の一族が、忌まれ始めていた渡来人側の勢力に取り込まれてしまったことを指すのではないだろうか。
そして渡来人と黒木の一族は、白木の一族に源の宮を追われ下界に逃げたのである。
おそらくは蟲を使って外傷に対する不死となり、滝から落ちるという方法で。
獣の肉など、食いやがる
余談となるが犬彦の肉食も渡来文化の影響と思えば納得できる。中華好みだったのである。
そして宮に残った白木の者、桜の一族こそが現在の「淤加美」である。
彼らは、雷竜を奉じるものとして身も心も変質した、本来は桜を奉じる一族だったのだ。
陰陽の気は白は生、黒は死を指す。
「死」を失った源の宮は暴走した「生」、すなわち白き不死の異空間と化してしまったのである。
追うものと追われるもの、彼らの力を分かったのは「神なる竜」、落雷である。
以下に落雷の前後状況の予想をまとめる。
幾星霜の昔。
そこには岩と水と、白黒二本の不死の神木、
そしてそれらを守り奉じる一族があった。
節を切り病瘤を切る神木の手入れを行ううち、その樹脂に包まれた道具は神力を得た。
彼らはその二振りを用いて神木から樹脂の雫、「涙」と呼ぶ結晶を手に入れ、
それらを用いた彼らは不老と長命に至った。
やがて彼らの元に、大勢の人々がきた。
不老と不死を求めて来たという彼らは、木や水と生きる先住の一族に友好と恭順を示し、
共にこの地に住まわせてくれるよう願った。
先住――水生の者たちは、承諾した。
池の対岸に居を構えた彼らは、見たこともない広大荘厳な建築物を建て始めた。
そして大規模な採掘と製鉄、五行の術をもって土地の神々を活性化させる。
仏教のほか吸精、御霊降ろしといった道術の導入、神食みや丸薬の研究も始まった。
彼らはその地を「京」と名付け、頭目を王と戴いたようだった。
しかし彼らの「開発」は土地の毒となった。
黒木も白木も、毒性を帯びた水や空気に侵され、徐々に弱ってゆく。
やがて黒木の者が裏切り、白の神木は渡来人に伐採されてしまった。
神域も丹塗りの建物が次々に侵してゆく。
白木の者は追い詰められ、神に祈った。
その時、一筋の落雷が轟く。
彼らは奇跡を――黒の神木の炎上を、
そして数日後には白の神木の復活をも目にすることとなった。
ほどなく、桜の神木に加え、神鳴る竜の力をも奉じるようになった彼らは、
竜の眷属「淤加美」を名乗り、その力をもって宮を再び自らの手に取り戻した。
人としての生を、大きく歪める代償を支払って。
落雷のほか、「白木の翁」から始まる桜竜戦前半の読み解きを交えた。
補足として白の神木は、現在巫女が眠る岩戸の上にあったと思われる(根だけが残され、生きている)。
黒の不死斬りにより?伐採された神木は注連縄ロボ中核に使われていると見られるが、詳細は次回としたい。
磐長と咲耶
古い土や岩が、そこに染み渡った水が、
神なる竜を根付かせたのだ
長命巨大化のほか、斬撃に強く、火に弱く、蟲の棲家となる変質を見せる変若水の効果は「植物化」。
その水の影響により雷竜はその身に根を生やされ、岩山に固定されてしまったのである。
少なくとも白木の一族、淤加美の者たちはそれを信じた。
なぜなら落雷ののち、桜が、すなわち上流の水の成分が永続的に変質したからである。
落雷以降、神域の水と京の水は、はっきりと異なるものとなった。
それは神域側の異形だけが「首が長く白毛に覆われ」「稲妻の力を得ている」ことから明らかである。それは笛を吹いている異形、取り残された京の貴族にはない、雷竜の力である。
(白色化や手足の枝が増えるのは水による植物化であり、これは京も神域も共通である)
そして黒松は稲妻を契機に失われたが、その痕跡は残っている。
花見舞台傍、宮の「大桜」である。
桜がこれほど曲がって生えることはない。
曲がる大木は、松である。
つまりその形状から宮の大桜とは、かつて神木の大黒松が折れたものに神木の桜が「宿り木」したものではないだろうか。
お宿りは吉兆ぞ
かぐわしく、輿入れ奉ろう
桜は落雷以降、おそらくは不死(常桜)のままの自らの分身を生む力を手に入れた。
そしてそれは、桜の一族も例外ではなかったのである。彼らは渡来人の術を元に、別な形での「不死」を手にした。
そして彼らのリーダー、「水生の御初代」と呼ばれた者こそが、
破戒僧・八尾比丘尼であった、という推測が他のテキスト類からは導かれるのである。
次回(こそ)は白木の一族と渡来人の間に生じたトラブルの詳細、および蟲や各種不死の発生について。
参考:
…更に彼の薬草、ヨモギや菖蒲は端午の節句を介して、火、鉄、鬼とも繋がりが予想される。
関連記事:
【隻狼】新 隻狼考察⑫_源の宮(神域の陰陽編)

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